何か新しい企画をするとき、どうやってアイデアを出していますか?
たとえば、
サラリーマンの人ならチームでブレインストーミング。
ブロガーさんならマインドマップ。
こうした方法のベースは
「それまでの自分が経験してきたこと」
「今の自分が常識だと思っていること」
を展開して、アイデアを出していくことです。
言い換えれば、自分の枠の中にあるもの以外には、目が届きにくいという特徴があります。
この記事では、自分の経験や常識の枠の外まで思考を広げる「チリテーブル」というフレームワークをご紹介します。
参考にした本はこちらです。
チリテーブルの方法|ランダムに条件を組み合わせる
チリテーブルは4つのステップでアイデア出しをします。
【チリテーブルの4ステップ】
- 変数を考える
- 変数に該当する単語を考える
- ランダムにつないでいく
- アイデアを考えていく
3つ目のステップで「ランダムに」つなぐことが、
今までの経験や常識を超えたアイデアへと導くカギです。
実際に1つずつステップを見ていきましょう。
ステップ①:変数を考える
引用した図のように、今までにない新しい乗り物を考える場合を見てみましょう。
変数と言われたら、「数学は苦手だし無理!」という声が聴こえてきそうですね。
数字は使わないのでご安心を。
変数を言い換えるならば、カテゴリや条件が当てはまると思います。
自分が乗り物を運転する時をイメージして、
その時に周りにいる人やどこで乗るのかを挙げます。
ステップ②:変数に該当する単語を考える
変数を挙げたら、次はその変数に当てはまる単語を考えます。
単語を考える時にポイントとなるのは、
思いついたキーワードはどんどん入れていくこと。
例えば、”高齢の女性“や”1歳の子ども“は1人で乗る想定かもしれませんが、
“カップル“や”家族“はまず間違いなく2人以上で乗る想定でしょう。
単語を挙げるときは、単語どうしが同じ条件で並ばなくてもOK。
思いついたものならどんどん挙げて良いのです。
気軽に、ふとイメージした言葉を並べていきましょう。
本の著者の佐々木さんは次のようにもコメントしています。
宇宙人といった非現実的な単語であってもリストに加えると、発想が枠外に広がります。
チリテーブルの目的は、
自分の中にある常識や知識の枠を超えて考えること。
こうした単語を入れてみるのも面白そうですよね。
ステップ③:ランダムにつないでいく
単語を挙げ終えたら、次はランダムにつないでいきます。
例えば、
会社でブレインストーミングをした時。
または、自分でマインドマップを書いたとき。
一度に2,000通り以上のアイデアを挙げることができるでしょうか?
アイデア出しのスタートラインとなるタネを20個でも考えられたら、良い方かなと思います。
チリテーブルが最強のアイデア出しツールたるゆえんは、
このランダムにつないでいくステップがあることなんですね。
ステップ④:アイデアを考えていく
さあ、既にあなたは2,000通り以上のアイデアのタネを手に入れました。
最後のステップで、アイデアのタネから具体化する方法に落とし込んでいきましょう。
チリテーブルはイノベーションの最強ツール
以上がチリテーブルの4ステップです。
チリテーブルを使えば、テーマに関するアイデアのタネを一気に挙げること
そして、これまでになかった組み合わせを生むことができます。
早稲田大学ビジネススクールで教鞭を執る入山章栄准教授は、
2017年に開催された西日本生産性会議で次のように述べています。
イノベーションを起こす第一歩として『新しい知(アイデア)が必要』・・(中略)・・「これは『既存の知』と、さらに別の『既存の知』を組み合わせることで生まれる。」
まさに、チリテーブルの活用がイノベーションを生み出す最強ツールとなる好例です。
実は・・・
この方法、あのベストセラーでも紹介されています。
その衝撃タイトルで一躍売れた「パン屋ではおにぎりを売れ」の中でも、
くみあわせ法として、ありそうでない組合せを探す方法が挙げられています。
「パン屋では~」の中では、
新しい組合せを見つける時のポイントとして
「新しさ」と「共感」が挙げられています。
見た人が「なるほど!」と共感できる組合せを
生み出しましょう!
チリテーブルの効果|忖度なしで新しいアイデアを試せる
ビジネス書「感性思考」の中では、ブレインストーミングとの違いを次のように述べています。
ブレストは、役職による意見の重み付けの排除(「部長がああ言うなら仕方ないか・・・・」といった忖度的な意思決定をいかに排除できるか)や、内向的な人の意見を汲み取る工夫など、相当丁寧なファシリテーションが必要という側面もあります。
サラリーマンの人が新規事業を複数人で考える場合、
メンバー間のパワーバランスによって軸になるアイデアが決まってしまいます。
チリテーブルの魅力は、
誰が挙げた意見でも、ランダムに組み合わせできるのがポイント。
メンバー間のパワーバランスとはかけ離れて、
参加者全員のアイデアをベースに考え始めるスタートラインに立てます。
1人でもできるチリテーブル
個人でアイデア出しをするときにも、チリテーブルは効果を発揮します。
チリテーブルの項目に、あなたの経験したことと、未経験なことを織り交ぜれば
新たなイノベーションを起こせるのです。
あなたが経験したからこそ書ける情報に、
新しい変数(読者層やテーマなど)を組み合わせてアイデアを練れば、
オリジナリティの高い情報発信につながります。
自分の今ある知識や常識の枠外にまで考えをめぐらせるチリテーブル。
一度は試してみましょう。
まだまだある、ブレインストーミングを超えるアイデア術5選
書籍『感性思考』の中では、チリテーブルの他にも
ブレインストーミングを超えるフレームワークを5つ紹介しています。
クレイジー8
Google傘下企業、グーグルベンチャーズ(GV)のメンバが生み出した発想方法です。
1人で実践できるので、チームではたらくお仕事以外の人にも役立ちます。
方法はいたってシンプル。
【クレイジー8の3ステップ】
- アイデアを出すテーマを決める
- 1枚の紙を3回半分に折りたたむ → 開くと8マスに分かれる
- 1マスにつき1分以内にアイデアを描く
A4サイズより大きい紙を使うと
1マスのスペースに余裕ができて書きやすくなります。
イラストは苦手というあなたも、
簡単な図形と説明用のキーワードを添えれば立派なアイデアです。
8つアイデアが出てこないときは
実際にやってみて、
「8つもアイデアが浮かばない」という壁にぶつかったとき。
そんなときは、チリテーブルを使って、あなたの常識の枠外まで
アイデアを広げるトレーニングです。
チリテーブルで発想がやわらかくなった後にクレイジー8を実践すれば、
湯水のようにたくさんのアイデアが出てきます。
ブレインライティング
ブレインライティングはチームで実践するアイデア出し方法です。
例として、4人でブレインライティングするのは次の6ステップです。
【ブレインライティングの6ステップ】
- 1枚の紙を2回半分に折って4マスの紙を作る → 4枚同じ紙を用意
- 1人1枚手に取って、1マス目に自分のアイデアを3分以内に書く
- 他のメンバと紙を交換。
- 受け取った紙に書いてある、前の人のアイデアをブラッシュアップ
- ブラッシュアップしたアイデアを隣のマスに書きこむ
- 4人全員がすべての紙に書き込むまで繰り返す
全員が、アイデアのタネを出す役と、アイデアをブラッシュアップする役を担います。
4人でブレインライティングをすれば、
12分間で4つのブラッシュアップされたアイデアを生み出せます。
ブレインストーミングならば、
1時間かかっても、ブラッシュアップ前のアイデアのタネが20個程度。
時間効率もアイデアの濃さも、どちらの方が効果的か。
あなたには言わなくてもお分かりですね。
全員の考えが詰まったブラッシュアップアイデア
ブレインライティングで出てきたプランは、どれも全員の考えが詰まっています。
メンバ間の上下関係で
「○○さんのアイデアだから優先しなきゃ・・・」と
忖度を避けることができます。
言い方を変えれば、あなたの意見もすべてのプランに詰まっています。
サムワンズシューズ
サムワン(someone)とは、自分以外の他者のこと。
つまり、他者の靴を履くという発想です。
このブログでも以前ブレイディみかこさんの同名の書籍「他者の靴を履く」をご紹介しました。
文字通り、他者(=他の企業)の人がこのアイデアを売り出したらどうなるか。
この視点で、アイデアを練る方法です。
常識ではありえない組み合わせをあえて考えることで、
自分の常識の枠を超えてアイデアを考える手法です。
フリップザオーソドキシーズ
オーソドキシーズ(orthdoxies)は、weblio英和辞典で検索すると「正統派的慣行」という意味です。
あなたの業界の常識を挙げて、その反対の実現性を考えるアプローチです。
デロリアン
映画「バックトゥザフューチャー」に出てきた車型のタイムマシン、デロリアン。
その名を取った方法は、デロリアンで未来の時代へ行くことを想像し、
新しいプロダクトやサービスについて考えます。
【デロリアンで10年後を考える例】
- スマートフォンでできること
- インターネットのサービス
- 車の動力
未来にどうあってほしいか、何があったら便利か。
考えがまとまったら、10年先に実現するために
今、始めるべきことを逆算します。
今の常識にとらわれずにどんどんアイデアを出すのがコツです。
チリテーブル実践編|ブログ記事のアイデア出し例
さて、ここからは実践編です。
チリテーブルを使って、アイデアのタネを出していく過程を、
3つのケースで紹介します。
さあ、チリテーブルのフレームワークに合わせて考えていきましょう。
実践ステップ①:変数を4つ思い付く
まず変数を考えます。その場でパッと思いついたものを挙げて次の4つとします。
【チリテーブルの変数】
- ブログを読んでくれる人
- 読んでくれる人の趣味
- 記事を読む時間
- 本のタイプ
3つ目までは読んでくれる人に注目して、挙げた変数。
4つ目は、パッと思いついただけで、統一感はありません。
まとまりがありすぎても、新しいアイデアは産まれないので、
このように挙げていきます。
実践ステップ②:変数に該当する単語を3~5個挙げる
それぞれ単語を当てはめていきます。
それぞれ3~5単語を挙げました。
第1変数 読んでくれる人 | 第2変数 趣味 | 第3変数 記事を読む時間 | 第4変数 本のタイプ |
---|---|---|---|
ブロガーさん | 筋トレ | 通勤・通学中 | 文庫サイズ |
ギターが弾ける人 | 食べ歩き | 寝る前 | マンガ |
サラリーマン | 投資 | 休日限定 | 英語の本 |
農家さん | 園芸 | 新書 | |
2歳児を育てるパパママ | 起業 |
この段階で、5 × 5 × 3 × 4 = 300通りの組み合わせが出てくることになります。
実践ステップ③:ランダムにつなげていく
ランダムにつなげていくと、今まで一度も考えたことがない組み合わせがどんどんでてきます。
ペルソナ①
ギターが弾ける人:趣味は釣りで、寝る前に、漫画を読む
ペルソナ②
2歳児を育てるパパママ:趣味は筋トレで、通勤・通学中に文庫サイズを読む
これで300人のペルソナを生み出すことができました。
実践ステップ④:アイデア例を挙げていく
さて、ここからは紹介する本を選んでいきます。
ターゲットのペルソナに合いそうな本を読んだ覚えがあれば、
もう一度手に取って読み返していきます。
ペルソナに合わせて、図書館や書店で検索するのも1つの方法です。
普段の自分では手に取らない本をあえて選べば、
あなたの経験の枠も、また1つ広がるのです。
『感性思考』でデザインスクールで学ぶエッセンスを体感
この記事では、ビジネス書『感性思考』の中から
アイデアのアウトプット方法だけに注目してご紹介してきました。
『感性思考』には、著者の佐々木康裕さんがイリノイ工科大学デザイン大学院の1年課程で学んだ内容がまとめられています。
ビジネスの世界で期待されるスキルは、経営学修士(MBA)から美術学修士(MFA)へと移り、
アートやサイエンスの造詣を持つビジネスパーソンが注目されています。
まとめ:ブレインストーミングを超える最強のアイデア出しスキルを修得しよう
ビジネス書『感性思考』から、
ブレインストーミングを超えるフレームワーク
チリテーブルを紹介しました。
新しいアイデアを生み出すとき、
あなたの常識の枠の外まで考えをめぐらすことができたら、
イノベーションはもう目の前です。
まずは実践してみましょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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