神さまたちの遊ぶ庭:北海道・トムラウシで過ごす山村留学の1年を綴ったエッセイ

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読書

今日ご紹介するのは、2016年に本屋大賞にも選ばれた作家の宮下奈都さんが北海道のちょうど真ん中、トムラウシへ一家で山村留学した1年を綴ったエッセイです。

家族の日常の面白さや北海道の大自然の満喫がテーマかと思いきや、

現地の人とのつながり、家族で過ごす時間の大切さ、たくさんのテーマが詰まった1冊でした。

電車の中で読んで、思わず吹き出したり、ウルっとしたり、読んでいて忙しい、そんな1冊をご紹介していきます。

作者は宮下奈都さんは「羊と鋼の森」で本屋大賞を受賞

このエッセイの作者は、作家の宮下奈都さん。

2016年には、調律師の青年を主人公にした小説「羊と鋼の森」で本屋大賞を受賞し、同作品が山崎賢人さん主演で映画化されたことでも話題になりましたね。

その「羊と鋼の森」を執筆していたのが、このトムラウシへの山村留学中だったことが、あとがきでも語られています。

トムラウシ:国立公園内にある日本百名山の麓

この本の舞台となるのは、北海道のトムラウシ。

大雪山国立公園内に位置しています。

地図でトムラウシを検索すると、本当に「北海道のど真ん中」という表現がぴったりな場所にあります。

漢字では富村牛、または富良牛と書かれるようですが、元々はアイヌ語の「トㇺラ・ウㇱ・イ」という言葉が語源で、「花や藻が多いところ」を表すそうです。

福井に住んでいた宮下家が4月にトムラウシへ引っ越すところからこの本は始まります。

山村留学は小中学生向けの制度

そもそも、山村留学とは何でしょうか。

トムラウシがある北海道・新得町のHPによれば、次のように説明されています。

山村留学とは、義務教育課程の教育を受けている小中学生の方が、現在住んでいる地域とは違う環境に転居転校し、学習するというものです。

(新得町HP>教育・文化・スポーツ>教育・学校情報>山村留学 より抜粋)

新得町の山村留学は、国立公園内に位置する絶好の立地を活かして、大自然の中での自然体験学習ができる魅力があります。

エッセイ「神さまたちの遊ぶ庭」の中でも、登山や釣りなど、自然の中で生きる人々が力強く描かれています!

おすすめポイント①:家族の日常が読んでいて面白い

宮下家は中学校3年と1年の男の子2人、小学校4年女の子1人の3人兄妹ですが、彼らの日常が面白い。

引っ越し先の富村牛小中学校は離島を除いて唯一の僻地5級に指定されている小中併置学校です。

僻地5級とは、駅や市の中心部から遠く離れたところにある学校を指定する級で、5級が最も遠く離れていることを表します。

最初は宮下さんも迷っていたようですが、福井の小中学校からの転校を提案された3人が目を輝かせながら

「いいね」
「おもしろそう」
「どうせなら、そういうところで暮らしてみたい」

(本文「新年 引っ越すことになった」より)

と反応したことで決着がついてしまいます。

また、3人それぞれの個性がステキです。

長男は小学校の卒業文集からマイペースさが伝わってくるし、次男はエッセイに載る仮名を「漆黒の翼」にしてほしいと希望する。

一番下の妹は、犬を飼いたい病をこじらせすぎるあまり、妄想の中で「ワンさぶ子」という犬を飼い始めてしまう

日記形式で1年のできごとが書かれていますが、彼らの成長には目が離せないですよー!

おすすめポイント②:トムラウシの人々とのつながりがステキ

トムラウシには牧場で働く人が多く住んでいて、現地の人と出会って長男が最初に思ったことは

「自分の身体はこんなに細かったのかと初めて思った」

(本文「四月 長い長い春休みが始まる」より)

小中学校のある集落を離れれば野生のヒグマが出たり、家の近くに猛毒のトリカブトが自生していたり、と危険なこともある街。

そんな街で、本気で生きている大人と出会うことが子どもたちの成長へとつながっていきます。

「ここトムラウシで、今日も本気の大人たちをたくさん見ました。大人の本気ってかっこいいです。」

(本文「六月 山が生きている」より)

長男が小中学校の運動会で話した言葉に、トムラウシの大人たちと過ごした日々のすべてが詰まっていると思います。

おすすめポイント③:家族が一緒に暮らせる時間を大切にしたくなる

宮下家の長男は中学3年で受験を控えていました。

トムラウシからは通える高校が無いので、長男が北海道の高校に通う場合は、家を出なくてはなりません。

このブログの中の人も、高校生の時に家族と離れて暮らしていたことがあります。

身をもって経験している分、このテーマは難しい。

子どもの側からすれば、新しい環境に魅力を感じます。反対に親の側なら、家族そろって暮らせる時間が終わってしまいます。

家族が全員そろって過ごせる時間は本当に短い。宮下家で言えば、長男が高校から家を出てしまえば、家族が揃って過ごせたのは小学4年の女の子が生まれてからの10年だけになってしまう。

そんな葛藤の中で進路を悩む姿は、今、子育てに奮闘しているパパママの未来だと思います。

最新刊「ワンさぶ子の怠惰な冒険」も刊行

神さまたちの遊ぶ庭では、子どもたちの妄想の中のペット、ワンさぶ子が登場しますが、2021年にタイトルにワンさぶ子が入った新刊が出ていました!その名も「ワンさぶ子の怠惰な冒険」

それぞれ大学生、高校生、中学生となった3人兄妹のその後を読みたいですね!

私もこの記事を書いていて知ったことなので、今読みたい1冊です。

併せて読みたい宮下さんの作品がもう1冊、「とりあえずウミガメのスープを仕込もう」

長男が小さかったころから、大学に進学して家を離れたあとまで、宮下さんの食にまつわるエピソードに心が温まります。

「神さまたちの遊ぶ庭」→「とりあえずウミガメのスープを仕込もう」の順番で読むと、トムラウシにいたころの宮下家の食がもっと深まって楽しく読めると思いますよ。

まとめ:笑いあり、家族そろって過ごす日々の大切さありの1冊!

この記事では、宮下奈都さんのエッセイ「神さまたちの遊ぶ庭」をご紹介しました。

山村留学で日々成長していく子どもたちの姿と、家族で過ごす時間の尊さ、子育て中のパパママにもヒントになることが多い1冊だと私は思います。

いざ自分が山村留学できるかはわかりませんが、子どもには大人の本気を見て育ってほしくなりました!

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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